2023年4月27日から始まった相続土地国庫帰属制度(以下、制度)。開始から2年が経過しました。ここでは、法務省が2024年4月16日と2025年4月28日に発表したデータから、各年3月31日時点における制度の利用状況を確認します。
相続土地国庫帰属制度は、相続または遺贈(相続人に対する遺贈に限る)により取得した土地を手放して、国庫に帰属させることを可能とするものです。建物は対象外となります。国庫に帰属させるためには、法務大臣(法務局)による要件審査・承認が必要となります。
制度の申請件数を地目別にまとめると、表1のとおりです。

総数をみると、2023年度末(2024年3月31日)時点では1,905件だった申請件数が、2024年度末(2025年3月31日)時点では、3,580件に増加しました。
2024年度末時点の地目別では田・畑の申請件数が最も多く、宅地が続いています。いずれも1,000件を超えました。山林も2023年度末の2倍になっており、制度の利用が進んでいることがうかがえます。
次に種目別の帰属件数をまとめると、表2のとおりです。

2024年度末時点の総数は1,486件で、2023年度末から1,200件以上増加しました。種目別では宅地が500件を超えて最も多く、次いで農用地が400件を超えました。いずれも400件以上の増加です。
森林は80件の帰属にとどまりました。不承認に該当するケースなどが多いのかもしれません。
却下や不承認となった件数をまとめると、表3のとおりです。

2024年度末時点では、却下、不承認ともに50件台となりました。
却下の理由では、「法第3条第1項及び施行規則第3条各号に定める添付書類の提出がなかった(法第4条第1項第2号)」が33件で最も多くなりました。
不承認では、「土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存する土地(法第5条第1項第2号)に該当した」が23件、「国による追加の整備が必要な森林(施行令第4条第3項第3号)に該当した」が22件と多くなりました。
なお、申請の取り下げ件数は、2023年度末の212件が2024年度末には579件と、2倍以上に増加しました。申請はしたものの、取り下げたケースも少なくないようです。
法務省によると、制度に関する相談として2024年10月から、事前予約制による法務局等でのWEB対応も始めたとのことです。制度の利用を検討される方は、事前にこうした相談なども活用されてはいかがでしょうか。
(※)法務省「相続土地国庫帰属制度の統計」
数字は速報値で更新されるため、ここで紹介した数字とは異なる時期の数字になっています。
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